オススメ本『コワイの認知科学』(第314回)

タイトル:『コワイの認知科学』 

著  者:日本認知科学会/監修

     川合伸幸/著,内村直之/ファシリテータ

出 版 者:新曜社 2016(平成28)年

内   容:恐怖を感じることは,身の危険を避け,安全を得るための大事な働きですが,「犬に吠えられて驚いたことがあるから犬が怖い」というように,学習や経験によるものだと思っている人が多いと思います。しかし,心理学の世界では,「コワイ」と感じるのは,人間の脳のメカニズムによるものであり,さらには遠い昔の生活スタイルに理由があるとされているそうです。人やチンパンジーなど霊長類の祖先にあたる動物は高い樹上で暮らしていましたが,ヘビは樹上に這い上がって襲ってくる危険な生物でした。このことから,ヒトやサルにとってヘビは危険物=「コワイ」存在として遺伝子に刻み込まれたというのです。

 本書では,ヒトやサルは生まれながらにして「ヘビはコワイ」という認識を持っているという仮説を実証するために,ヒトやサルや人間の赤ちゃんを対象にした様々な実験が行われ,多くの対象者がヘビを「コワイ」ものと認識しているという結果が導き出されてきたことが紹介されています。

ある仮説を実証するために,どんな実験をすれば結果を導き出せるのか。地道にデータを集めて分析する心理学研究の世界を,サイエンスライターが「ファシリテータ」となり,著者と一緒に分かりやすく伝えてくれます。

ちなみに著者は,テレビ番組の企画でジェットコースターやお化け屋敷に恐怖を感じる人に怖さを抑える方法を伝授することが度々あったそうです。その方法は…。気になる方は本書をのぞいてみてください。

請求記号【141.6/116カ】

                                           (資料課 佐々木)