令和7年度

広島県立高等学校の図書館の工夫

 令和7年10月から11月の間に、県立高等学校6校を訪問しました。
 各校で取り組まれている、インクルーシブな(誰もが利用しやすい)図書館運営の参考になる工夫を御紹介します。


○ リラックスできるスペース

 生徒にとって居心地がいい場所を創出するために、カウンターの職員と目が合わない方向にソファ等を設置し、生徒に人気のある文庫・コミックス・雑誌・新刊等を周囲に配架して、リラックスした状態で本に手を伸ばしやすいようにしたスペースを作ったり、館内の奥に絨毯や椅子を設置し、その周辺に学校生活や悩みに関わる本を配架して、教職員の目を気にせず読むことができるスペースを作ったりしている。
 椅子やソファ、絨毯を設置する向きや場所を工夫することで、喧噪を嫌う生徒や自分だけの時間をもちたい生徒へも配慮することができる。
 その他にも、窓際にカフェ風の机と椅子を設置し、読書に集中できるスペースが作られている図書館もある。

因島高等学校
因島高等学校
広島商業高等学校
三次青陵高等学校

福山工業高等学校
三次青陵高等学校
広島商業高等学校
広島商業高等学校

○ 情報収集のためのコーナー

 探究学習への活用や、郷土への興味関心をもってもらうため、新聞を読むことのできるコーナーや、記事の切り抜きを展示したコーナー等が設置されている。
 その学校の特色に応じて、専門誌を含む雑誌コーナーが展開されている図書館や、生徒が広告の実際を学ぶことができるようチラシを収集し、自由に閲覧することができる図書館もあった。
 また、探究学習に有用なWebサイト等にタブレットやスマートフォンですぐにアクセスできるよう、二次元コードを掲載した資料カードを作っている図書館もあった。

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福山工業高等学校

○ 公共図書館の利用

 古典の日の展示や、季節行事に応じた展示、授業に関わる参考図書等を充実させるため、近隣の市町立図書館や、県立図書館から図書を借りて展示し、貸出しも行っている。

福山工業高等学校
三次青陵高等学校

佐伯高等学校

○ 参考図書のブックトラック

 館内での調べ学習の利便性や、教室への持ち運びも考慮して、百科事典と辞書類をブックトラックに載せて配架している。


○ ボードゲーム等の設置

 生徒が図書館に足を運びやすくなるよう、ボードゲーム(電源を用いず数名が対面で行うゲーム。囲碁、将棋、リバーシ、会話で進行するカードゲーム等)を置いている。
 設置後、来館者が大幅に増えた。カードゲームは図書館資料とし、思考力、判断力、表現力を伸ばすため、授業で用いられている。

佐伯高等学校

神辺高等学校

○ 外国籍の生徒への対応

 学年に数名在籍している外国語を母語とする生徒への対応として、外国語の図書を購入したり英語文庫コーナーを作ったりして図書を提供している。図書館だよりも、漢字にルビを付けたものを個別に配付している。


○ 放課後絵本タイムの実施

 絵本の持つ豊かな世界にふれる時間を高校生にも持ってほしいと考え、積極的に蔵書に取り入れている。保育士を目指す生徒には、多くの絵本にふれ、読み聞かせの経験を積む「放課後絵本タイム」を実施し、長年読み継がれている絵本や保育の現場で活かせる絵本を常時置くスペースで、自由に手に取ることができるようにしている。
 オープンスクールの際にも、参加する中学生が生まれた頃の絵本等を使った模擬授業「あなたの中の絵本たち」を行い、好評だったとのことである。

神辺高等学校

広島県立特別支援学校の図書館の工夫

 令和7年5月から6月の間に、県立特別支援学校6校を訪問しました。
 各校で取り組まれている、インクルーシブな(誰もが利用しやすい)図書館運営の参考になる工夫を御紹介します。


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広島北特別支援学校

○ 配架の工夫

 日本十進分類法に基づいて厳密に並べるのではなく、教科別・種類別に分けて配架している。書架には、色シールを貼った見出し板を付け、同じ色のシールを資料に貼って、児童生徒が自ら棚に返却できるよう工夫している。
 色分けした上で、見出しにイラストやピクトグラムを載せている図書館もある。
 返却だけでなく、自分で本を探し、選ぶ際の助けにもなる。

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広島南特別支援学校

○ コーナーづくりの工夫

 書架の上部にイーゼル等を置いたり、書架の棚の数段を空けたりして、面出し(表紙を見せて置くこと)ができるコーナーを作っている。表紙が見えるので、その本への興味・関心を高める効果がある。
 面出しする本は、児童生徒が遠くから見ても何が描いてあるか分かりやすい絵で、カラフルなものが選ばれている。
 並んでいる図書が多くて棚を空けられない場合も、季節や行事等に合わせて図書を入れ替える、面出しスペースを作る工夫が考えられる。

広島中央特別支援学校
三原特別支援学校大崎分教室
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庄原特別支援学校

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福山特別支援学校

○ 図書館レイアウト図

 利便性を高めるため、教科名など児童生徒に分かりやすい表記で、図書館レイアウト図を作成し、掲示、配布等を行っている。
 点字を併記したレイアウト図を作っている図書館もある。


○ 破損した絵本の回収

 人気の高い本は、ていねいに扱っていても破損することが多く、その修理を図書館担当者が行うこともある。
 破損した本を回収するために、図書館内に専用の箱を用意し、児童生徒が破損した本を自ら入れる仕組みをつくっている。
 担当者が破損した本をきちんと把握し、修理を行うための工夫である。

広島北特別支援学校

令和6年度

広島県立呉三津田高等学校訪問記

~学校司書による学校図書館活性化取組事例のご紹介~

 令和6年9月27日(金)に県立呉三津田高等学校を訪問しました。
 県立呉三津田高等学校は、令和5年度に学校図書館のリニューアルを行っています。
 令和6年4月に着任された貞森惠利加主任学校司書にインタビューしましたので、その内容をご紹介します。


【春、着任当初に行ったこと

〇 着任前の令和5年度の図書館リニューアル事業により、館内は、広く、明るく感じられるようになっていました。自習を目的とした利用が多いとのことだったので、令和6年度からは、まず、生徒の皆さんに足を運んでもらえるよう、展示を実施するとともに、館内整備も行いました。最初に行った展示は、進級・入学で緊張した心をほぐすような本を集めた「ちょっとひといき…こんな本はいかが?」です。また、館内整備では、配架是正・書架見出しの作成から始めました。実際に書架を見て、必要な見出しの項目を洗い出し、分かりやすい言葉に置き換えるなどして作成・設置しました。
〇 古い百科事典は廃棄されていたので、新しい情報が載っており、分かりやすい百科事典として『総合百科事典ポプラディア』第3版(ポプラ社、2021年)を購入しました。
〇 生徒・教員同様、学校司書にもiPadが配付(貸与)されています。
図書館だよりや展示の紹介、イベントの告知など、校内への情報発信は、Classiを使っています。
〇 どの時期にどんな展示をしたか等、記録を取っています。来年度以降もその記録を参考に、計画的にかつ様々なテーマで展示等を実施していくためです。


【ニーズを捉えて…情報センター、学習センターとして】

〇 生徒たちの進路関係の情報への関心は高いので、「新聞切り抜きコーナー」を設置しました。地域に関する話題や考えを深めるために活用できそうな記事を収集・整理して置いています。受験の時期が近づくにつれ、面接や小論文の参考にするために利用する生徒が増えました。先生方にも好評で、生徒を連れてこのコーナーをめあてにやって来てくれます。
〇 1年生の探究の時間(GAYA)にはディベートを行っています。関連本を選書し、不足分は県立図書館から借りて用意したうえで、各教室に持って行き、資料の活用を図っています。
情報にたどり着きにくい本については、参考になりそうなところにしおりを挟んでいるものもあります。
〇 進路関連の本を利用する生徒が多いので、大学の学部学科、職業・資格に関する本や、その職に就いている人が書いた本などを集めて、進路コーナーとして設置しています。
〇 くつろげるよう、ソファスペースには、本だけでなくパズル等も置いています。勉強の合間の気分転換や、ちょっと一息ついて「できた!」と小さな達成感を味わえるコーナーとなっています。生徒に人気のコーナーのひとつです。
〇 インプットだけでなく、アウトプットの場としても機能する図書館を目指し、作業や話し合いの際等にも使える文房具コーナーを設置しています。


【県立図書館の活用】

〇 県立図書館の「団体貸出」や「図書セット」で借りた本を、展示等で活用しています。令和6年度は、県立図書館から団体向け図書の無償譲渡を受けました。
また、学校で対応しきれないレファレンスの調査を依頼したり、図書室運営に関する相談をさせてもらったりと、物的・人的ともに様々な面で県立図書館を活用しています


 【心がけていること と これからの目標】

・ 朝・昼・放課後と勉強のために来室する生徒が多い中、少しずつ、本を借りる生徒も増えています。「本って面白いね」「図書室に行けば何かあるかも」と思ってもらえるよう、様々な取組を継続して実施していきたいと思っています。
・ 生徒への働きかけはもちろんですが、先生方とつながり、連携することを大事にしています。
・ 受験対策をする3年生だけでなく、1、2年生の図書館利用も増やすよう工夫したいと思っています。
・ 他校の学校司書とのつながりも大切だと考えています。他校から訪問を受けることもあります。
・ 何か分からないこと・気になることがあった時、県立図書館に気兼ねなく質問して構わないということを、元県立図書館職員として他の学校司書に伝えていきたいと思っています。

令和2年度

府中市立府中明郷学園訪問記

~地域ボランティアと連携による読書活動にかかわる授業事例のご紹介~

 府中市立府中明郷学園では,地域ボランティアと連携して読書活動にかかわる授業を実践されています。
 令和2年10月27日(火)に1年生を対象に行われた授業と関係者の皆さんへのインタビューの内容をご紹介します。

写真1 ようこそ府中明郷学園へ

【ボランティア「昔話部」による授業】
 新米やかかしの実物を子供に見せた後,絵本の読み聞かせや紙芝居の実演がありました。

写真2 読み聞かせ
写真3 サツマイモ

・ 読み聞かせ『かかしのじいさん』
(深山さくら/文,黒井健/絵,佼成出版社,2009)
・ 紙芝居『こめだしえびすさま』
(新井悦子/文,いわぶちさちこ/絵,教育画劇,2013)

 また,畑で収穫されたサトイモ,サツマイモ,カボチャなどやクリ,カラスウリ,アケビなどの野山の植物の葉や実の実物を子供に見せるなど,実りの秋をテーマとした絵本や紙芝居の世界から子供たちが“本物”に出会う経験ができるよう工夫されていました。

写真4 紙芝居上演

【ボランティア「本読堂」による授業】
 「うちで読もうよ」~ Stay Home! Read Books! ~プロジェクトの図書貸出事業によって貸し出した図書セットの本の中からブックトークをしていただきました。

◎紹介された本
・ 『ペロのおしごと』(樋勝朋巳/作,小学館,2018)
・ 『ねこのホレイショ』(エリナー・クライマー/文,ロバート・クァッケンブッシュ/絵,阿部公子/訳,こぐま社,1999)
・ 『きょうりゅうのきって(ぼくはめいたんてい)』(マージョリー・W.シャーマット/ぶん,マーク・シーモント/え,光吉夏弥/やく,大日本図書,2014)
・ 『こども世界の民話』上,下(内田莉莎子/ほか著,実業之日本社,1995)

写真5 ブックトーク
写真6 図書セット

【ボランティアや学校関係者へのインタビュー】
 授業の後,ボランティアや学校関係者の皆様にお話を伺いました。

◎ 本読堂さんへのインタビュー

活動について
・ 月2回朝の読書の時間(15分間)に1年生~4年生と特別支援学級の5クラスに入って読み聞かせを行っている。現在のメンバーは6~7名で活動は16年続いている。
・ 学校とのやり取りは,教頭先生が連絡窓口となってくださっている。
・ 読み聞かせで読んだ本や感想等をノートに記録し,学校側にも見てもらっている。先生からも感想等を記入してくださることがある。また,「子ども司書」の児童が書き込んでくれることもある。

写真7 ノート
写真8 児童の様子

選書等について
・ 季節感のあるもの,時事問題や今習っている授業の単元に関連したものなどを選んでいる。
・ 絵がはっきりし,遠くからも見えやすいかにも留意している。
・ 現代は家庭環境も様々で,いろいろな家族の形があることやジェンダーの問題もあるので,多様性という視点にも留意している。
・ 選書に迷ったときは,昔話を選んでいる。昔話は話自体が子供をひきつける力を持っている。
・ 高学年向けには,少し長目の絵本や気持ちが微妙に揺れる内容のものだったり,詩を取り入れたり,授業内容を反映したりといった工夫をしている。また,低年齢向けのものは避けている。
・ 低学年には,絵本の見開きで違う場面となっている絵本など,分かりにくくないかには注意している。
・ 読み聞かせに使う本は府中市立図書館や尾道市立みつぎ子ども図書館で借りたり,自宅にあるものを使ったりする。
・ この活動の中で一番大変なのは,選書。子供たちに喜んでもらえるかどうか真剣に悩む。
・ 読んだ後は,一定期間学校の図書室に置いて子供たちに自由に見てもらえるようにしている。

読み方について
・ 自分の子供に読んで聞かせて反応を見ている。
・ ページをめくって一呼吸おいてから読むようにしているが,話の流れによっては,さっとめくってすぐ読むなどの工夫をしている。
・ 読みの練習はしっかりするようにしている。
・ 本番では,読む前に子供たちと少し会話をして,コミュニケーションを取ってから始めている。

子供の反応や様子等について
・ 子供たちが保育所の頃から読んでいるので,目立った変化は感じないが,いつも熱心に聞いてくれる。
・ 子供が大人になって街で出会ったときに,「あの時はおもしろかった」など感想を言ってくれることがあり,活動を続けていて良かったと感じる。
・ 高学年になってくると,少し照れくさそうに聞いている。聞いていないように見えるが,ちゃんと聞いている。そういう姿に思春期をむかえているのだと成長を感じる。子供が幼児のころから読み聞かせを行っており,人間関係ができているので,難しい時期の高学年にも読み聞かせができるのだと思う。
・ 保育所の時から読み聞かせをしていることもあり,本が好きな子供が多く,よく聞いてくれる。そういう子供たちなので,読み聞かせをした時の反応もストレートに返ってくる。選書や読み手の力量が試される。
・ 子供たちが聞く姿勢ができているのは,自分たちの活動よりも,先生方の普段の指導の面が大きいと思う。
・ 新型コロナウイルスの影響による休業明けに久しぶりに子供たちに会ったら,なぜか分からないが,とても成長したように感じた。長年活動してきて,子供の成長に応じて,この時期にはこの程度の本という感覚があるが,例年通りだと子供たちが満足していないように感じるので,少し難し目の本も選んでいる。

※ この点について,校長先生は「祖父母を含め家庭でしっかり子供を見ていただいているのはもちろんだが,コミュニティで子供を見ていただいている点も良いように作用しているのではないか。」とおっしゃっていました。

◎ 昔話部さんへのインタビュー

・ 平成27(2015)年から活動しており,毎月1回授業を担当している。
・ 昔話を子供に伝える活動はもちろんだが,子供に地域のことを知ってもらうことに重点を置いて活動している。
・ 例えば,地域の昔の話をしたり,植物や野菜,生き物(うなぎなど)を持ち込んで,子供が実際に見たり触ったりできるようにしている。季節を子供たちに伝えることが大事で「この時しか見られない」ものにこだわり,「つて」という「つて」に声をかけると快く提供してくれる。今は新型コロナウイルスの影響でできないが,新米で作ったおにぎりや大学芋を配ったこともある。
・ 時には,地域に子供を連れ出し,稲刈り体験をすることもある。地域の人も,子供に来てもらうのが楽しみになっている。
・ 授業では,科学の本も良く用いる。本に出てきた実物を見てもえるようにしている。実体験をすることで,本を読むという個人の体験をその場にいるみんなで共有したい。人と人のつながりを大事にしたい。

写真10 サトイモ
写真11 植物
写真12 児童の様子

◎ 校長先生へのインタビュー

・ 子供たちはいつも身を乗り出して聞いている。
・ 読み聞かせなどの体験を通し,子供たちの聞く姿勢,集中力が養われている。
・ ボランティアの皆さんがあそこまでのエネルギーをかけておられるのはすごい。教員が日々授業をする中で同じことをするのは,なかなか難しい。
・ ボランティアの皆さんには,子供たちに対し,注意すべきことはきちんと注意してもらっている。地域の子供を地域の大人がきちんと育てる姿がある。
・ 学校側は教頭がボランティアグループとの連絡窓口となっているが,各グループが非常に主体的に動いてくれるので,学校としては助かっている。