オススメ本『古代エジプト人の24時間:よみがえる3500年前の暮らし』(第296回)

〇タイトル:『古代エジプト人の24時間:よみがえる3500年前の暮らし

〇著  者:ドナルド・P・ライアン/著

      大城道則/日本語版監修,市川恵里/訳

〇出 版 者:河出書房新社 2020(令和2)年

○内  容:舞台は紀元前1414年頃,アメンホテプ2世の治世の首都テーベ。そこで暮らす,社会階層や職種の異なる24人の古代エジプト人の暮らしが描かれています。国の頂点にいる王は,支配者としての責任を思い眠れぬ夜を過ごし,ミイラ職人は次々届く死体をその特殊技術で淡々と加工し,農夫は牛とともに土を耕して種を蒔く…。登場人物たちは,自身の境遇に思いを馳せながらも自分の役割を全うするべく生きています。

作者はエジプトを専門とする考古学者で,この本は,現地に残された壁画や遺跡を手掛かりに解明されてきた歴史的知見を基に書かれています。物語の大部分は「架空」とありますが,考古学的解説や図版が文中に配置されているため,作者が思い描く古代エジプトの人々の暮らしのイメージが,読者にリアルに伝わってきます。

スパルタ教育に耐える書記学生や王妃の墓荒らしを後悔する泥棒など,24人のそれぞれのエピソードを読むことで,はるか遠い昔の古代エジプト時代を身近に感じることができる,ユニークな歴史書です。

〇請求記号【242/120ラ】

(資料課 佐々木)