オススメ本『風の交響楽(シンフォニー)』(番外編)

タイトル:『風の交響楽(シンフォニー)』 

著  者:光原 百合/著,藤城 清治/影絵

出 版 者:女子パウロ会 1996(平成8)年

内   容:

 尾道市出身で,昨年若くしてお亡くなりになった光原百合さんの短編集です。 細やかな心の機微や理性では制御できない人間の業(ごう)を,鋭くも優しい筆致で描く光原さんが,春夏秋冬にあわせて描いた21のストーリー。

 中でも,「何もできなかった魔法使い」は,秀逸です。

~偉い魔法使いたちからみれば,取るに足らない何もできない魔法使い。
 病気の子供がいても,呪文も魔法も使えないのでただじっと子供のそばにいて,苦しむ子供の手を握り一緒に汗を流すことしかできませんでした。
 やがて子供が元気になると,偉い魔法使いたちは自分の術が効いたのだ!と喧嘩を始めましたが,子供が,心から会いたがったのは,自分の手を握りずっと励ましてくれた,あの魔法使いでした。
 その頃“何も”できなかった魔法使いは自分を恥じて姿を消していました~

 わずか4ページのファンタジーに,人生の縮図が示されているかのようです。
 ステンドグラスのように幻想的で荘厳な藤城清治さんの挿絵と相まって,心が洗われるような美しい文章が印象的です。
 この春,卒業する方へのプレゼントに,いかがでしょうか。

請求記号:【H97/ミツユ96】

                                           (副館長 正井)

風の交響楽