〇タイトル:『十面埋伏』上・下
〇著 者:張平/著,荒岡啓子/訳
〇内 容:タイトルの「十面埋伏」とは,「周囲に隙なく伏兵が潜んでいること」という意味です。刑務官である羅維民(ルオウェイミン)が,王国炎(ワングゥオイェン)という受刑者に不信感を持ったことがきっかけで,国をも揺るがす大きな事件へと発展していきます。
絶望的な状況の中で,警察組織の人々が,真実を明らかにするために途方もない熱意を持って,仲間たちとともに命を懸けて捜査に及んでいく姿は自己犠牲という言葉では到底表現しきれません。
文化大革命を経験した著者であるからこその,特権階級に対する一庶民の目線も非常にリアルに描かれています。著者があとがきに記した「現実社会を生きている多くの人々の一員として,社会に対する関心を放棄することは,人民の利益と自分の判断への関心を放棄するのと同じこと」の一文が読後に心に残りました。
中国にこのような小説が存在したことに感謝したくなる一冊でした。
〇請求記号:【923.7/シヒ105/1~2】
資料課 前田