オススメ本『精選女性随筆集 11 向田邦子』(第301回)
タイトル:『精選女性随筆集 11 向田邦子』
著者:向田邦子/著,小池真理子/選
出版者:文藝春秋 2012(平成24)年
内容:子供の頃のことを,どれくらい覚えていますか。
家族旅行が楽しかった,体育の授業が苦手だった……と,出来事は思い浮かんでも,その時の情景や自分の感情を細かく具体的に思い出すのはなかなか難しいのではないでしょうか。
名作「字のない葉書」も収められたこの随筆集には,向田邦子さんの子供時代の体験を書いた文章が多く載っています。それぞれのエピソードは,向田さん特有の流麗で過不足のない描写によって,まるで自分が体験したことのように思い浮かべることができます。
家族の「愛」について書かれた「子供たちの夜」では,父が宴会から持ち帰った折詰を夜中に食べさせてくれた話や,母が自分たちのために毎晩鉛筆をけずってくれる音を聞くと,暗い夜の廊下でも子供心にほっとするような気持になった様子などが目に浮かぶように描かれています。
懐かしさとほのかな切なさがこみ上げてきて自分の子供の頃のことを家族と語り合いたくなる,珠玉のエッセー集です。
請求記号:【914.68/112セ/11】
(事業課 妹尾)