オススメ本『祝祭と予感』(第292回)   

○タイトル:『祝祭と予感

○著  者:恩田陸/著

○出 版 者:幻冬舎 2019(令和元)年

○内  容:
 ピアノコンクールの世界を描いて直木賞や本屋大賞を受賞した蜜蜂と遠雷』のスピンオフ作品で,全6編の短編で構成されています。
 中でも印象的な「袈裟と鞦韆(ブランコ)」は,本編『蜜蜂と遠雷』の中でコンクールの課題曲として登場した「春と修羅」の作曲秘話が書かれています。本編ではほとんど名前が出てこない菱沼忠明(ひしぬまただあき)という作曲家が,一人の個性的な教え子との思い出をブランコに座って追想し,作曲の着想を得ていきます。頭に描いているイメージを音として表現できない芸術家の生みの苦しさや,形にできた時の至上の喜びが描かれています。
 音楽が流れているような魅力的な表現とともに,登場人物の背景を知ることで,本編の『蜜蜂と遠雷』をさらに楽しむことができる作品です。
 「祝祭と掃苔」から始まり「伝説と予感」で終わる構成等,計算し尽くされた短編集です。

○請求記号:【F/オリ119】

(事業課 中丸)